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執筆者の写真Nakayama Siphonist

沸けばいいのかフラスコのお湯!

更新日:2022年9月23日

誰もが美味しいコーヒーを淹れてみたい!と思いますよね。

THE SYPHONIST の中山です。今回は、プロ向けのお話です。




軽視してしまいがちな沸く温度!



美味しく淹れるために、レシピや時間や撹拌、いろいろなことを調整して美味しいコーヒーを追求していることと思います。中でも抽出温度は、どの抽出方法においても無視できません。


目的の温度に温めたお湯をそのまま抽出に使う一般的な抽出方法と違って、サイフォンは普通フラスコでしっかり沸かしてから抽出を開始するため、温度はフラスコ内のお湯の沸き具合を目視で確認して抽出することがほとんどです。しかし、いつものように沸いているフラスコ内のお湯の温度は、いつもと同じでしょうか。意外とそこは軽視されがちな部分なんです。なぜ、軽視しちゃうんだろう。。。それは大抵、いつも同じ場所で淹れているからです。




沸点が見えるように!


今回の投稿では、フラスコ内で沸いているお湯の温度を、環境面から察することができるようなきっかけになればと思い記述しています。今回のキーワードは " 沸点 ” です。


誰でも知っている " 沸点 "。

標高によってその沸点が異なることも知っていますよね。

例えば、標高0mのときの沸点は約100度のように・・・。何年生で習ったかな。。。


では、標高1,000mのときの沸点は何度ですか。意外とこれに応えられる人は結構少ないものです。




焦ってしまった最初の一歩!

予選初出場に向けて練習する様子

ちょっと余談です。

それは私がまだ駆け出しのサイフォニストだった頃。2012年 ジャパン サイフォニスト チャンピオンシップに初出場したときの話です。初出場で準優勝できたものの、当時は店頭でサイフォンを淹れる経験もなかった素人のような自分は、10分間という予選競技だけは組立てたとおりにきちっとできるように、繰り返し練習をしていました。大会経験もない自分には未知の世界だからこそ不安で、その不安を拭うためには、繰り返し繰り返し練習するしかなかったのです。


予選1週間前頃からは、いつも同じような時間に同じように競技を繰り返しできるようになり、予選本番では、練習のとおりにそれをまずはこなすことを目標に挑みました。

初めての予選競技で抽出する様子

予選当日。。。


緊張の中、いつもどおり進んでいたはずの自分の競技、いつもどおりのタイミングで抽出を始めようとした瞬間、いつも沸いているはずのお湯がフラスコ内で沸いていなかったんです。焦りました。めちゃくちゃ焦りました。


後から見返した動画によると40秒程度のタイミングの差でした。しかし初出場の競技会、いつもどおりではなかった目の前の現象に頭は熱くなり、体感的には2分以上沸くの待っていたような、タイムオーバーしてしまう覚悟と緊張感に襲われていました。


実際には、15秒程度を残し競技時間内に終えることができました。もともと90秒程度の余裕を設けてプレゼンを組んでいたため、それでもタイムオーバーすることはなかったのです。終了後、達成感に浸っていたものの「なぜ、あのとき沸いていなかったのか?」、それだけがずっと気になってしかたなかったのを今でも覚えています。




どこでもサイフォンに適した温度を!

その答えは、沸点でした。


私が毎日練習していたところ(長野県)の標高は720m、競技会場(東京)は25m。結論から言えば、沸点は標高が1,000メートル毎に約3度下がります。つまりは、300メートル毎に約1度下がりますから、練習していた場所の沸点は競技会場に比べて約2.4度低くなります。つまり、練習では早く沸き、本番ではそれより沸くのに時間がかかったという訳です。


競技会で使用されていた当時の熱源で2.4度の差は、沸騰するまでの時間は30秒程度かかります。たった30秒ですが、競技会というのは時間内に競技を終えるために1秒1秒を必死で削ってトレーニングしていきます。そんな世界にとっては30秒はものすごく大きな差です。


しかし、標高と沸点というのは、普段気にしなくていいものだと思います。なぜなら、サイフォンを淹れる場合、大抵同じ場所で淹れることがほとんどだからです。ご家庭でも、お店でも、自分が淹れる場所はいつも大抵一緒ですから、沸点に差が出ることはありません。私は、サイフォニストチャンピオンになって以降、全国を飛び回り様々な場所でサイフォンを淹れてきました。標高2,500mから0mの場所まで。日本国内は比較的標高差は少ないですが、海外にまで活動領域を広げれば、場所によっては標高と沸点はサイフォニストとして頭に入れておかなければなりません。世界大会に日本代表として出場する場合、海外の会場の場所(標高)は無視できません。



実際にはその場の気温などの影響も受けますので、標高ばかりが沸点を決めるものではありませんが、サイフォンのフラスコ内で沸いている様子がいつもと同じでも、淹れている場所が変われば同じ温度で抽出できているものではないということを頭の片隅にしまい込んでおいてください。


標高と沸点は、誰にも変えられません。

今サイフォンを淹れる場所が、どのような場所にあるか、それを把握し、その場に合わせて他の手段で調整・抽出しいくことが大事ですね。




[ "沸点" メモ ]

平時の場所では、1,013hPa(1気圧)で水の沸点は100度です。

標高が1,000メートル高くなると気圧は約100hPaずつ低下し、沸点は約3度低下していきます。


ワンポイント!


場所を変えてサイフォンを淹れる人は・・・

沸かして淹れるサイフォンは、沸き具合を見て、標高と沸点を踏まえて温度を管理しよう!


[ 参考 ]

私はいつも、標高を簡単に測れるアプリ「標高ワカール」を使っています。



THE SYPHONIST


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